◆その商品、ウチでも取り扱っています
ある住宅資材卸の会社で若手営業担当者と営業同行をした際のエピソードです。定期的に注文が入る工務店の社長が営業担当者に言いました。「この前、急ぎで必要なものがあってね。普段使わないからどこで仕入れるか探すのが大変だったよ」営業担当者「どのような商品ですか?」工務店社長「珍しい建具。お客さんが是非このようなドアを付けてくれ、と」営業担当者「えっ?それならウチでも扱ってますよ」社長「早く言ってくれよ。言ってくれればあんなに探さなくても良かったのに。お宅が取り扱っていること全く知らなかった」日頃より情報提供で自社で扱っている商品を案内しておけばこのようなことはありませんでした。
これは様ざまな業界でよくある事例です。お客様は商品ラインナップを全て理解しているわけではありません。取り扱っていることさえ知らないケースも多いです。なぜなら、お客様は「この商品はA社で買う」、「あの商品はB社で買う」などと前例から何も考えずに購入先を決めているからです。「このような商品もありますよ」「新商品の案内です」と、定期的に商品を売り込むことで、新たな受注を獲得することができるのです。
◆いま、「売り込まない」スタイルの営業が大流行している
いま、営業において「売り込むことは悪だ」という風潮があふれています。「売り込まなくてもトップ営業になれる!」や「売りたかったら売り込むな!」、「皆から愛される売り込まない共感営業」などと、何とも魅力的なタイトルの書籍が書店には並んでいます。草食系の営業担当者が多い、いまの時代、支持されるのでしょう。確かに、相手のニーズを無視した、一方的な「売り込み」は反感を買い、選ばれることはありません。しかしながら、「売り込み」が「悪」というわけでは全くないのです。目標達成のためにはお客様に強く売り込みを行い、購入を促すことも時には必要です。また、売り込まなければ、お客様には商品やサービスの利点は伝わりませんし、先に挙げたエピソードのように、扱っていることすら知らないケースも多いのです。では、どのような「売り込み」がお客様から敬遠され、どの場面で「売り込み」を行わないといけないのでしょうか。それが次の通りです。
◆このような「売り込み」はお客様の反感を買う
①お客様がすでに知っている情報
いまの時代、情報を得る媒体は様ざまですので、お客様はすでに知っていることも多いです。住宅の営業で、価格や工法などHP、チラシやパンフレットを見れば一目瞭然の情報を強く勧めたところで、相手に響くことはありません。
②相手の表情、反応を無視した「売り込み」
商談中、お客様の反応が悪いにも関わらず、熱心に説明をしたところで、お客様は飽き飽きしてしまいます。提案の中でも相手の表情や反応に対し、敏感にアンテナを立て、興味の無さそうな箇所は軽く、関心のありそうな部分は丁寧に、とメリハリをつけた説明をする必要があります。
③自社、自分のメリットだけを考えた「売り込み」
月末にのみ現れ、「何とか購入してください」とお願いする営業。口には出さないものの、「今月の数字が足らないのだろうな」とお客様は察知します。また、「必要ない」と言っているにも関わらず「そこを何とか」と言われたところで嫌悪感すら覚えます。
◆このように「売り込み」をしていこう
次に、「売り込み」が必要な場面、効果的な「売り込み」の仕方を解説します。
①定期的な情報発信、提供による「売り込み」
新商品、新サービスなど、お客様がまだ知らない情報は積極的に「売り込み」を行ってください。そのためにも定期的な顧客との接触、訪問が必要となります。
②商品・サービスのメリットがしっかりと整理された「売り込み」
商品勉強会をしっかりと行い、ロープレにより淀みなくメリットを説明することはお客様に安心感を与えます。
③お客様のニーズや課題を確認した後の「売り込み」
ニーズ確認により、ひと通りお客様の課題が確認できたとき、自社で取り扱う商品が課題解決に役立つのであれば、全力で「売り込む」必要があります。「以前お聞きした課題は弊社のこのサービスで十分解決できます。」と強くお勧めしましょう。
④バイイングシグナル(買い信号)が出ている場合のクロージング
クロージングはお客様の決心のお手伝いです。商談中、お客様からバイイングシグナル(買い信号)が出ている場合は、強く「売り込み」を行う必要があります。動作・表情では、大きくうなずき始める、身を乗り出す、資料を注視し始める、じっと考えるそぶりを見せるなど。言葉では、価格や支払い時期の確認、発注や納品のスケジュール確認、注文後のフォローの質問、などが現れればタイミングを逃さず強くお勧め(売り込み)をしてください。ポイントとしては、批判や疑問はしっかりと受け止め、解決することです。また、勇気をもって何度も押すことも重要です。
◆自信を持って売り込んでいこう
日頃、弊社にも様ざまな営業担当者が新規で飛込み訪問をしてきたりテレアポをしてきます。質問が上手な営業は多いのですが、どこか弱弱しさを感じるのも実際のところ。自信満々に自社の商品やサービスを「売り込む」ことができる営業はいまの時代、新鮮でそれだけでお客様の注目を得ることができるのです。
【ポイント】
「売り込み」は悪いことではない。事前準備をキチンと行った上で、自信を持って売り込んでいこう。
株式会社経営支援センター チーフコンサルタント 吉田 敬真