顧客の定着化、リピート顧客の重要性

顧客の定着化、リピート顧客の重要性

2025/07/01

顧客の定着化、リピート顧客の重要性

日本は衝撃的なスピードで人口減少している

    6月頭、新聞、ニュースで大きく報道されていた話題です。2024年の出生数が前年比5.7%減の68万6千人。1899年の統計開始以来初めて70万人を割り込みました。対して死亡者数は1.9%増の160万5千人。出生数から死亡者数を引いた自然減は約90万人です。政令指定都市(北九州市の人口は93万人)が一つ消滅するほどの規模で人口が減少しているのです。つい4~5年前の自然減は約80万人でしたので、減少幅は拡大の一途をたどっています。つまり、市場は確実に縮小しているのです。昔から優秀な営業は「新規取引先をバンバン開拓できる人」というイメージがありました。しかしながら、超人口減少時代においては、「新規開拓をバンバン行いながらも、開拓したお客様を離さない」営業が優秀とも言えます。つまり、リピート顧客の重要性がなお一層高まっているのです。

ある建築会社の事例

    10年ほど前の事例です。ある建築会社の社長より弊社に相談がありました。社長「新築注文住宅部門は、入ってくる金額は大きいものの、顧客の注文も多く忙しい上に結局利益幅が小さい。今後は経営のバランスを考え、エンドユーザーに直接攻めの営業を行うリフォーム部門を強化したい。」との要望です。相談をお聞きした弊社はリフォーム部門の営業マニュアル作成の支援を行いました。その中で提案したのが、「生涯顧客」の考え方です。建築業界では、日本の人口がピークを迎えた20年以上前から「売って終わり」のビジネスモデルではなく、「生涯顧客(新築から建替えまで一人のお客様から繰り返し受注すること)」という考えが広まっています。前述の建築会社に対して、「フォロー営業を徹底しよう!」のスローガンのもと、リフォーム営業の方針をつくりました。それが下記の通りです。

①「新築の顧客管理」過去、自社で新築住宅を施工したお客様はリフォームの見込み客。リスト整備を行う。
②「リフォームサイクルごとの提案」一般的な木造住宅は30年の建替えサイクルの中で十数回修繕が必要となります。5~6年ごとの畳張替、10年ごとの外壁補修、15年ごとの屋根の補修など、①で作成した見込み客リストに対し、適切なタイミングでアプローチを行います。
③「OB顧客」いままでにリフォーム取引のあったお客様は弊社のことを知っています。定期的なイベント開催、情報誌等により囲い込みを行いました。
④「営業担当者の教育」お客様に不快感を持たれないよう、第一印象を磨き上げる基本動作などの研修を徹底的に実施しました。その他も、マニュアルに基づいた営業を行うことで順調にリフォーム部門は拡大し、いまでは、全社の売上に占める割合は50%に迫る勢いとのことでした。

新規顧客とリピート顧客の利益貢献度

 面白いデータがあります。「既存取引先」のお客様からつくる売上と同額の売上を、「新規」のお客様からつくるとすればコスト(経費/広告費や人件費など)の差はどれくらいか、というデータです。業種の差はあれど、一般的に「新規」のコストは「既存」のコストの5~6倍です。例えば100万円の売上をつくるのに「既存取引先」で10万円かかったとすると、「新規」ではコストが50万円~60万円かかってしまうのです。何も、「新規開拓」を否定しているわけではありません。「新規開拓」は組織に前向きな良い風を吹かせますし、個々の営業力の強化にもつながります。重要なことは「新規開拓」に力を入れながら、開拓した取引先にリピート受注をうながすことなのです。

リピート受注を取れる営業の条件

 結局のところ、リピート受注を取れるか否かは、営業担当者次第でもあります。リピート受注の多い営業担当者の条件は次の通り。

①意識改革
    まずは、各営業担当者がリピート受注の重要性を認識すること。リーダーは徹底的に教育をする必要があります。

②新規開拓をきちんと行う
    リピート受注にも限度があります。定期的に新規開拓のアプローチに取り組み、取引数を増やさなければリピート受注のネタもなくなってしまいます。

③売ったあとも熱心
    売るときはお客様の要望をしっかりと聞き、情熱的にプレゼンテーションを行うものの、契約が終わると一切連絡もしない。これでは、お客様は「売った途端に手のひら返しで冷たくなりやがった」と感じます。重要なのは売ってからです。「使用感はいかがですか?不都合はないですか?」などと声がけを忘れてはいけません。

④紹介が多い
    売ったあとのお客様に対し、しっかりとフォローを行うことで、既存のお客様から紹介も発生します。紹介がある営業担当者はリピートも多く、信頼の現れ。

⑤定期的な接触
    定期的にお客様と接触し、忘れられない、というのも重要なことです。理想は訪問ですがメールや手紙なども接触に入ります。手前みそではありますが、弊社代表国吉と私が手間はかかるものの執筆し月刊で発行しているこのニュースレターも定期的に接触するツールです。

⑥お客様管理
    先の建築会社の事例でも述べましたが、既存のお客様をきちんとリスト管理を行い、適切なタイミングで新商品や新サービスの声がけを行うこと。既存のお客様のリストがきちんとされていないのはいわゆる「ザル営業」です。

【ポイント】   

「新規開拓」と「リピート受注」、どちらも疎かにしてはいけない。

株式会社経営支援センター チーフコンサルタント 吉田 敬真

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