◆「なぜ〇〇?」で本心は確認できない。正しい質問の仕方とは
先日、親族の不動産取引の場面に立ち合いました。高齢の親一人を地方に住まわせることは不安。子供たちの目が届く首都圏に引っ越してもらうため、いま居住しているマンションの売却を検討。仲介を通しての売却にあたり、多少、知識を持ち合わせている私も同席したのです。
しかしながら、担当の30代営業Aさんの質問内容、質問の仕方に非常に違和感を感じました。唐突に、「今回は、なぜ売却を検討されたのですか?」の質問。住んで30年以上も経過しているにも関わらず「なぜこの物件の購入を決めたのですか?」と購入理由を聞く。「希望の売り出し価格をこの金額にするのはどうしてですか?」など。状況ヒアリングとしてお客様に質問をするのは、営業として当然のことですが、「なぜ〇〇?」や「どうして〇〇?」の質問をされると、お客様は尋問されていると感じますし、質問のピントがずれていれば不愉快に思います。そのような質問に対しては回答も取って付けたような理由しか出てきません。事実、質問を受けた親族も「なぜ購入したか?」の質問に対し、本当は様々な理由があったにも関わらず、 「何となく」と、受け流すような回答をしていました。このままでは納得できる商談にはならないと感じましたので、私も、Aさんの質問に補足することとしました。
◆商談における質問の重要性
一般的な商談のプロセスは、①アプローチ、②ヒアリング(ニーズ確認)、③プレゼンテーション(提案)、④クロージング、です。その中で最も重要なプロセスは②のヒアリング(ニーズ確認)と言っても過言ではありません。このニーズ確認がしっかりできていなければ、本来は納期を重視しているお客様に対し、価格や品質をアピールするようなズレた提案になってしまいます。そこで、必要なのが「質問」です。「お客様の現状を的確に把握する」ため、質問を行うことは非常に重要です。「質問をしろ!」と日頃から上司から言われているためか、ほとんどの営業マンが積極的に質問はできています。しかしながら、その質問の仕方がマズいのです。過去、営業同行をしていても多くの営業マンが意味のない、または相手を困らせる質問をしているのを目にしてきました。
◆効果的な質問のやり方とは?
それでは、お客様の現状を的確に把握する、効果的な質問のやり方を紹介します。
①相手がYESと答える質問
初回訪問やまだ会話が温まっていない場合の質問は基本的に相手が「YES」と答えるであろう質問を行ってください。「寒いですね~」ですとか、「大谷翔平がまたホームラン打ったんですって。すごいですね~」など、明らかな事実を話題に出し、同意を求めます。お客様も「YES」と答えているうちに緊張がほぐれ、会話が深まっていきます。
②オープン質問、クローズド質問
オープン質問とは、「お客様の好みをお聞かせいただけますか?」など、自由に答えられる質問ですが、考えるのに時間がかかり、連発されると苦痛を感じます。「AとBではどちらが良いですか?」など、選択肢を与えるクローズド質問も交えながら質問をしていってください。
③未来質問、過去質問
未来質問とは、お客様の可能性や将来に焦点を当てた、仮定の質問です。例えば、「もし契約するとしたら、決定はいつごろになりそうですか?」 と質問することで、お客様がまだ、想像もしていない将来に視点を向けることができます。また、過去質問は、不満や課題を抽出するのに非常に効果的です。「前回の契約条件はいかがでしたか?」と質問をすると、良かったことよりも不満に感じたことの方を覚えているものです。
④「なぜ~」ではなく「何が~」質問
「なぜ〇〇?」の質問はお客様を困らせる可能性もあります。特に「なぜ」+否定形の質問はお客様を委縮させます。「なぜ、選ばないのですか?」ではなく、「何がご決断の支障になっているのでしょうか?」と極力「何が~」の表現を使うようにしましょう。上司の皆さん、これは部下指導の場面でも同様です。部下のミスを注意する際、「なんでこんなことをやったんだ?」などと質問をしていませんか?理由を聞いたところで、出てくる回答はほぼ100%、その場しのぎの適当な回答です。再発防止のため良かれと思って原因を聞いているのかもしれませんが、その質問をすること自体が無意味です。
⑤視点を変える質問
自分の考えに固執するガンコなお客様の場合、是非視点を変える質問を投げかけてみてください。その際使うフレーズが「信用・信頼のある人だったらどう考えるか」という質問です。「先代社長でしたらどちらを選択されるでしょうか?」や「奥様は何を重視しますかね?」と、投げかけるのが効果的です。
⑥当て馬質問
お客様に対し、いきなり「予算はいくらですか?」と尋ねるのは不躾であり、「それは言えない」と回答されるはずです。その際は、相手の反応を探るためにも、仮定のワードをぶつけてみるのもひとつの手段です。「先日契約いただいたお客様も予算は100万円ほどでしたが御社もそのくらいですか?」と質問をすれば、「そこまでは出せない」など何かしらの反応があるはずです。
冒頭ご紹介した、不動産売却の「なぜ購入したか?」の質問ですが、本来は「当て馬質問」を使うべきです。「マンション購入でよくある理由が、学校からの距離ですが、購入当時、そのようなことは思われましたか?」など、です。
【ポイント】
営業において質問は重要だが、質問の仕方次第では逆効果にもなる。
株式会社経営支援センター チーフコンサルタント 吉田 敬真