失敗の経験が人を育てる

失敗の経験が人を育てる

2024/02/01

失敗の経験が人を育てる

テーマ㉙「失敗の経験が人を育てる」

    「部下の意識が低く、厳しく細かな指導を行っても全く変わりません。」ご支援先の企業で管理職面談を行った際、このような発言がありました。自身の部下育成に非があるにも関わらず、「あいつは使えない」とその責任を部下に転嫁しているに過ぎません。 

    残念ながら、厳しい指導や成功体験の共有では本質的に人は変わりません。なぜなら上司からのアドバイスは所詮、借り物の体験を聞いているにすぎず、自身の体験が伴っていないからです。では、人が変わるのはどの場面でしょうか。それは大きな失敗をし、克服する過程です。野村克也監督の名言に次の言葉があります。「失敗」と書いて「せいちょう」と読む。失敗によって、自身の誤りや間違いに気づき、次への改善が生まれます。その場の反省で終わるミスではなく、絶望感や苦しみを感じるほどの失敗。その克服から得られるエネルギーはどんな指導よりも劇的に人を成長させます。

    振り返れば、私自身、仕事で大きな失敗を繰り返し、その苦しみを克服する経験をしてきました。「経済的な困窮」、「社会人一年目で全く仕事に興味を持てずメンタル不調」、「転職したものの、全く結果がでない」、「ミスの隠蔽が発覚し、待遇のペナルティ」大小問わず、失敗を多く繰り返してきました。その中で仕事観、周囲への配慮、仕事の進め方など大きく変化し成長を実感できるようになりました。上司の皆さん、是非、部下にどんどん失敗をさせてください。それこそが部下とチームの成長につながる特効薬となります。

「新入社員に対する訓示の打ち合わせ」

    食品卸売業A社では来る4月の入社式で社長が7名の新入社員に向けて訓示を行う予定です。スピーチの内容を事前に人事部の山田課長と打合せをしています。社長「変化が非常に激しく、過去の成功体験が通用しない社会になっています。失敗を恐れず、どんどん挑戦をしていってください、と訓示をする予定ですが、どう思いますか?」山田課長「私も、新入社員には挑戦をしてもらいたいと思います。それと同時に彼ら、彼女たちを育成する立場の上司にも、新人に失敗させることを恐れないよう指示しないといけないですね。」社長「その通りだね。」

解説

    上司である以上、部下の失敗を見過ごすのは勇気が必要です。しかしながら、失敗が部下の成長につながり、後に大きな利益を自身のチームにもたらしてくれることは間違いありません。いわば、部下に失敗を経験させることは、将来に向けた投資でもあるのです。しかしながら、失敗のさせ方にも正しいやり方があります。

1.ミスと失敗は違う     ミスと失敗は似たような言葉ですが、全く異なります。ミスとは不注意や怠慢、基本(マナーや礼儀礼節)の不足によって引き起こされたもの。これは、できるだけ無くしていかなければなりません。

次に失敗とは何か。その定義は、努力はしたものの、思い通りの結果にならなかった場合。もしくは生じてしまったトラブルのことです。本人の能力・性格も影響し、なかなか防ぐことは難しいです。

2.失敗させないマネジメントでは部下の経験値が増えない

    「こういうやり方でやってごらん」、「言った通りにやりなさい」最初から正解を教える指示では、部下は考える習慣をなくします。たとえ結果的にうまくいってもそれは上司の力量。自身の経験値が増えるわけではありません。ある程度の基礎が身に付いているのであれば、書類作成、お客様との折衝などでも目的・目標は示した上で、まずは自分でどうすれば良いかを考え、実行させる。失敗したとしてもそこから自分の経験値が増えていきます。

3.失敗することで自身の誤りに気づき改善が生まれる

    「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」これもまた野村監督の言葉です。成功には偶然の要素もあり、再現性が無い場合もありますが、失敗には必ず理由が存在します。その理由に気づき、改善を図ることで次回の成功確率は上がります。また、失敗による苦しみが大きければ大きい程、その克服の過程で得られる価値観の変化は大きなものとなります。

4.成長につながる失敗を経験させる上司の行動とは

①失敗を恐れない組織風土づくり

    心理的安全性の構築。発言やチャレンジが許される組織をつくる。

②失敗を責めない

    失敗を責めると、ただ失敗することを恐れ、挑戦をしなくなる。

③すぐに答えを与えない

    自分の力で「答え」にたどりつくことで、仕事が自分ごととなる。

④質問により答えを自分で見つけさせる

    「なぜ、うまくいかなかったと思う?」質問し気づきを深める。

⑤次の機会を与える

    一度の失敗でチャンスを取り上げるのではなく、再度挑戦する機会を与え、成功体験を積ませる。

⑥リスクマネジメントにより、大きな損失を伴う失敗は防ぐ

    大きな損失を伴う失敗はなるべく起こらないよう事前にリスクマネジメントを行う。任せる仕事のレベルを見極める。

5.上司自身がレベルアップし視野を広げる

    結局のところ、部下の失敗を恐れているうちは、上司の余裕がないことの現れ。多少の部下の失敗はカバーできる仕事の基盤をつくるため、上司自らが新しいステージの業務に挑戦する必要があります。上司自身のレベルアップが求められているのです。

山田課長は入社式のあと、さっそく新入社員を受け入れる上司に次の通達を出しました。「新入社員には失敗をさせても良いのでどんどん挑戦をさせてください」

【ポイント】
失敗こそが成長につながる。部下にあえて失敗を経験させよ。

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