■誰が総理大臣でも円安、賃上げは加速する
自民党総裁の高市氏か、それとも野党統一候補か、どちらが新総理になるのか、不透明となった(10月15日現在)。高市氏は代表的な財政出動派。株価はすでに史上最高値を記録。しかしその副作用もある。財政悪化の懸念が高まり円安が加速する。もう一つの経営課題が最低賃金の大幅引き上げだ。これは全政党が2029年に現在の1121円から1500円にすると公約している。伸び率で見ると134%。現在の新卒初任給を24万円とすると2029年には32万円となる。そうなると全社員の賃上げが必要だ。生産性を上げなければ人は採用できず企業存続は困難を極める。
■圧倒的生産性向上のためにやるべき事とは
コロナ以降、3%~4%のインフレ状態。人手不足もあり、あと10年は続く。残された時間は少なく、もはや生産性向上に待ったなしだ。早急に手を打つ施策は次の7点。
1.インフレ率の2倍の生産性向上が基本
仮に社員100人。年間粗利益が10億とする。一人当たりに換算すると年1000万円。インフレ率が4%とすると一人当たりの粗利益が8%増の1080万円。これで企業も健全な利益が確保でき、インフレを上回る賃上げが可能。問題はこれを毎年持続できる経営力にある。
2.高粗利益率、低労働分配率で高賃金となる
中小企業では売上総利益最大化が最も重要な指標。インフレ下は質が問われる。優良企業はとりわけ粗利益率が高い。人、モノ、サービス、アフターフォロー全ての質が高いからだ。ちなみに上場企業の労働分配率は38%。中小企業は70%。65%を超えると多くが赤字に陥る。それだけ生産性が低いと言うことだ。
3.儲からない、将来性がない事業からの撤退
「赤は減らした分だけ利益」。万年赤字、将来性が見込めない。そんな事業は早期に撤退すべきだ。祖業だから。先代が立ち上げた事業だから。時間の経過とともに傷口は大きくなり高い代償を払うことになる。それに赤字事業のもとで育った社員は甘い考えと負け癖がついている。どこに行っても使い物にならない。
4.変われない、稼げない人間に対する処遇
成果主義の導入率は中小企業で25%。1000人以上の企業では75%。中小企業の方が動かないオジサン、働かない管理職が多いと言うことだ。マンネリ感漂い変化を嫌う集団となっている。対策として①次世代を担う若手の育成。②人事制度を見直し、若手、中堅社員の賃金を上げる。むしろヤル気のない人間が去った方が緊張感は高まり結果として少数精鋭の集団となる。
5.売上の中身を鋭くチェック
値上げ効果もあり売上高は伸びた。しかし粗利益率は低下し売上総利益額は減少。これは仕入上昇分を価格転嫁できていないことが原因。同じく値上げ効果で売上高は堅調。しかし出荷量は5%落ち込む。これはシェアを競合に奪われている可能性が高い。得意先件数の増加、新商品の伸び具合、売上の正体をシビアに見抜き、更なる成長の一手を考えなければならない。
6.教育熱心な企業は稼ぐ力が圧倒的に高い
コラムも書き続けて29年。348号目になる。いつの間にか還暦を迎えた。今でも毎月20社の顧問先に直接伺い現場指導を実践。業種もバラバラで上場企業から中小企業と幅広い。赤字企業は一社も存在しない。共通しているのはとにかく「教育熱心」だと言うことだ。トップは理念を真剣に語り、幹部は目標を達成する強いリーダーシップを発揮。現場は決めたことを徹底してやり切る。言い方は悪いが何の目新しさもない。ただただ人育てに超がつく程、熱心なだけである。
7.間接部門、工場の生産性向上のポイント
間接部門の生産性向上は、処理スピード、専門性、仕事領域の拡大で実現できる。工場は「次工程はお客様」と言う強い意識とクレーム防止に尽きる。5Sの徹底は当然のこと。IT、AI、システムの効果的導入。他にも士業取獲奨励による専門家集団で他社との差別化を図る。最後は利益を上げ毎期、設備投資ができるかどうかにかかってくる。古い設備では戦えない。
■目標に向って強烈に挑戦する社風を創れ
伸びない企業ほど敵が身内にいる。商品が悪い、納期が遅い、やれ上司が嫌い。この様な組織の長はまともに顧客を見ての仕事は出来ず生産性低下の最大の原因となる。経営幹部は自らを律し、有言実行で仕事に取り組まなければならない。変わらない社員、そして人間力が弱く目標達成出来ない経営幹部はいずれ辞めていく。しかしその後、入れ替わった社員、経営幹部が会社を支えてくれる。これが組織というものだ。
ワンポイントトーク
【利益を残さねば企業は存続できず!いまこそ人材・組織に大ナタを振るい生産性を向上させよ!!】