■インフレは10年続く。戦略転換が急務
30年続いたデフレも終焉を迎え、いまや完全なインフレ状態。原材料、食糧品、エネルギー価格、賃金まで全てが上昇している。毎年3%~4%程度のインフレが続くと5年後は同じ「物」が1.2倍となる。これまでのやり方だとコスト高に押され営業利益は圧縮される。中には赤字転落組みもあるはずだ。思い切った戦略転換が今、求められている。
■インフレ時の稼ぎ方と人材育成
いままさに経営の転換期。売上を伸ばし利益を出すのか。規模を縮小し利益を出すのか。儲からない事業を譲渡するという方法もある。市場の衰退、後継者問題もあるなら、いっそのことM&Aで身売りする選択もある。どれを選ぶにしても「利益」をたたき出さない限りは存続も出来ないし、二束三文でしか売却出来ない。インフレ時代における利益の出し方と稼げる人材を育て上げるには次の7点が重要となる。
1.賞与原資を給与に組み入れ、年間休日を増やす
まずは「人が来てもらえる水準」であるかどうかだ。理念ややりがいを熱く語っても、待遇が悪ければ面接にさえたどりつけない。賞与原資を給与に組み込むことで基本給を上げる。更に業績が伸びれば賞与を支給する。そして生産性をあげ年間休日も3年かけ業界トップクラスを目指す。経営者の覚悟が問われている。
2.顧客の期待を上回る企業体質になっているか
身だしなみ、言葉使い、約束を守る、と言った基本の「徹底力」。商品知識が豊富、提案力が磨かれ商談の主導権が取れる「営業力」。短納期、小ロット対応が可能な「生産力」。小さなクレームにも素早く対応できる「アフターフォロー力」。知名度ある大企業も、この様な「力」を持っている中小企業との取引を望んでいる。
3.売上を捨て利益増につながる先を発掘する
利益拡大の最優先は売上の実態、正体を正しく把握することだ。取引先の粗利益率、ロット、配送、回収条件、手間(手離れ)、在庫と様々な角度から分析。結果的に取引きしない方が利益増につながる先が必ず出てくる。
4.創業家の人間に軽々しく役職を与えるな
いまの若い人間に「終身雇用」という発想は全くない。誰もが憧れ名だたる企業に入社しても自らの成長を実感しなければ何の迷いもなく去ってしまう。オーナー企業でとりわけ目につくのは能力もない身内に役職を与えている点だ。仕事に取り組む姿勢もポンコツ。そんな会社に将来はないと優秀な社員から辞表が相次ぐ。いまは昭和ではない。令和なのだ。
5.考える人間を育成する
AI先生に聞けば何でも答えが返ってくる時代。この利便性が逆に考えない人間を創る最大の原因になる。解決するには①「利便性よりアナログを優先する」。自ら議事録を作成。原価計算をする。粗利益率を弾く。システムやITに依存すると本質が見えてこない。②「報連相強化」価値判断基準を共有し自分が経営者ならどうするか、を常に考える。③「答えを教えない教え方」考える人間、自立できる人間に育て上げるには必要な手法。
6.経営幹部のモノサシがどこにあるかが問われる
例えば売上高経常利益率10%を達成している企業。そこの経営幹部はそれが当然だと体に染みついている。10%を下回る前兆があれば赤字に陥るかのごとく大騒動だ。儲からない企業は赤字になってもしょうがない。3%の利益率が限界。目標はあるにもかかわらず、いつの間にか前年を超えたらOKという有り様。業績のモノサシをどこに置き、それを達成して当たり前だという強い信念が肝要。幹部の思考が業績に表れる。
7.一流に触れる機会をつくる
多くの社員が社会人となった時は経済は落込みデフレ化であった。給与が伸びない中、節約思考で質の高い物に触れるケースが少なかったはずだ。1000万円以上もするトヨタのレクサス。中古のおんぼろ車しか乗ったことがない人間に販売できるのだろうか。購入せよという訳ではない。その高級な物を見る、触れる、感じる。それだけでも勉強になる。これからのビジネスは財務内容が健全で価値観が同じ企業、そして所得の高い消費者が対象でないと中々儲からない。
■3年かけ収益構造を変えていく
インフレ時は高付加価値で粗利益率の高いビジネスを展開すべきだ。率=質であり、より高い専門性が必要となる。そして最強の採用戦略とは、利益が伸び続けている企業になることだ。この様な企業に質の高い人材が集まってくる。大企業ではROA(総資産利益率)、資本効率が重視されている。中小企業は異なる。自己資本率を高め経営の安定性を向上させることに尽きる。
株式会社経営支援センター 国吉拡
ワンポイントトーク
【インフレ時代はいままでの売り方が通用しない。徹底的に利益にこだわり強い企業に変革せよ! 】