顧客の人事異動に一喜一憂してはいけない

顧客の人事異動に一喜一憂してはいけない

2026/11/01

顧客の人事異動に一喜一憂してはいけない

◆「人事異動」がピンチとなる!

   「長年懇意にしてくれたキーマンのA部長が他部署へ異動してしまった」、「後任のB課長は競合他社と付き合いがあるらしい」このようなニュースを聞くたびに頭を抱える営業は少なくありません。ほとんどのBtoB(法人相手の)営業にとって「人事異動」は良いイメージを持たれていないのではないでしょうか。実際に、担当者が変われば取引会社も替えられるのは珍しくありませんし、基本的に新しい担当者は、前任者の否定から入るもの。特に、改革を前面に打ち出す方が担当者になった場合は、まず、既存の契約の見直しから入ります。

    恥ずかしながら、私も一昨年、このような事例を経験しました。ありがたいことに10年近くも毎年、4月に1週間の社内での新入社員研修を依頼して頂いていた、ある金融系IT企業。次年度も当然私に依頼があるものと考え、4月の数字を見込んでいました。例年であれば10月の内定式が終わればすぐに研修日程と内容の打合せの連絡が入ります。しかしながら、10月中旬になっても連絡が来ません。そこでこちらから連絡を行ったところ、懇意にしている担当者より、翌4月の新入社員研修から教育担当が変更になる予定で、いま引き継いでいるところとの説明を受けました。嫌な予感がしましたので、新しい担当に挨拶にうかがい、フォローを行いましたが、結局、全面的な研修内容の刷新の方針となり、あっけなく担当を外れました。

    しかし、私は断言します。顧客の人事異動に一喜一憂しているうちは、本当の意味での「一流の営業」とは言えません。 人事異動は単なる売上減少のリスクではなく、自社の価値を証明し、取引をさらに拡大させるチャンスなのです。

◆なぜ「人事異動」に揺さぶられるのか?

    そもそも、なぜ多くの営業担当者が人事異動に右往左往してしまうのでしょうか。原因の多くは、「個人と個人の関係(個人依存の営業)」に頼り切り、組織対組織の関係性を構築できていない点にあります。「A部長が自分を気に入ってくれているから契約が続いている」という状態は、一見良好な関係に見えますが、極めて危険です。担当者の「人柄」や「仲の良さ」で繋がっている契約は、その人が去った瞬間に白紙に戻ります。キーマンの異動によって案件が無くなってしまうのは、顧客が「あなたの会社のサービス」に価値を感じていたのではなく、「個人的な義理」で買っていただけ。弊社経営支援センターの研修でもお伝えしていますが、営業の本質は「仲良くなること」ではなく、「顧客の課題を解決すること」です。「人事異動」で焦る営業担当者は、自社の価値提供ではなく、人間関係だけに依存していた現実に向き合う必要があるのです。

    また、取引先にとって、一人の担当者とだけ親密な関係になってしまうことは、決して愉快なものではありません。取引が大口であればあるほど、「あの営業担当者はA部長とつるんでいるが、何か裏があるんじゃないか」などと思われてしまいます。

◆「人事異動」をチャンスに変える視点

    それでは、どのように「人事異動」を取引拡大のチャンスに変えていけば良いのでしょうか。その視点が次の通りです。

①周囲との関係性

    日頃から出来るだけ多くの社員と関係性をつないでおかなければなりません。「実際に商品を使って頂いている方にもお話をうかがいたいので、ご挨拶をさせてください」と担当者の了解を得た上で上司や部下、他部署の方と名刺交換を行い、「何か不満や疑問があったときはいつでもご連絡ください」と一声かけておく。このようにできるだけ社内全体に好印象を与えておくことが必要です。

②担当者変更の際、後任への引継ぎ報告書を営業主導で作成する

    異動が決まったキーマンA部長に対しては、これまでの取り組みと成果をまとめた「報告書」を営業主導で作成し、引き継ぎ資料として準備します。A部長から後任の担当者へ「この会社のおかげで自社の課題が解決した」と伝えてもらうこと。

③新任キーマンの課題に寄り添う

    新しく着任したキーマンは、前任者と同じことをやり続けるだけでなく、「自分なりの成果を出したい」「新しい改革を行いたい」という意欲や焦りを抱えています。ここに営業のチャンスがあります。既存の契約内容をただ説明するだけでなく、「〇〇様が目指される方針に対して、我が社はこのような形で貢献できます」と、新任者の成果づくりを助けるパートナーとしてアプローチするのです。新任者の新しい課題を誰よりも早く引き出すことを最優先にしてください。

④引き続き部署にいる方からの応援をもらう

    たとえ、新しい部長が「なんでこの会社とこのような取引をしているんだ?」と指摘されたとしても、「いや、部長、この会社はレスポンスが良いですし、品質も安定してます。他社に乗り換える必要はないと思いますよ」と周囲から応援をもらうこと。しかしながらこれは、日ごろから担当者以外とも関係性を構築できていなければ難しいことではあります。

⑤前任のキーマンとも関係性を継続する

    ここを見落としている営業担当者が非常に多いのが現実です。異動していった前任キーマンは、自社のサービスの価値を誰よりも理解してくれている「最高の理解者」です。将来的に組織のキーマンから会社のキーマンになることで大きな契約になることも多いです。

◆「顧客の成功」に軸足を置く営業へ     「人事異動」は、毎年必ずやってくる定期イベントです。避けようのない外部環境の変化に対して、その都度一喜一憂するのは、明らかな準備不足です。日頃から「個人」ではなく「組織の課題」に向き合っておけば、「人事異動」はチャンスにもなり得るのです。

【ポイント】   

日頃の営業活動の質が、「人事異動」後の失注を防ぐ。

株式会社経営支援センター チーフコンサルタント 吉田 敬真

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