コミュニケーションの土台 〜信頼関係〜

コミュニケーションの土台 〜信頼関係〜

2021/11/01

コミュニケーションの土台 〜信頼関係〜

コミュニケーション不全は大病の原因です。多くの組織で、上司・部下間や先輩・後輩間のコミュニケーション不全、部門間のコミュニケーション不全に由来する問題が散見されます。報連相は組織の情報伝達のために極めて重要です。しかしながらなぜ報連相が徹底されないのでしょうか。また、上司が部下に対し、正論で指導してもなぜ、部下に響かず行動を改めないのでしょうか。それは上司と部下との間の信頼関係が構築されていないからです。ここが改善されない限り、問題は解決しません。MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授はこのように提唱しました。人間関係の質の向上はメンバーの思考の質につながり、思考の質は行動の質につながり、最終的には結果の質につながっていく、と。いわゆる成功の循環モデルです。

チームメンバー間のコミュニケーション不全の事例

    食品卸売業で働く3年目社員の高田主任。1年目から営業成績は抜群で、会社内でも一目置かれる存在です。しかしながら、チームのメンバーや関係各所とは少しコミュニケーションの問題があるようです。今日も朝早くから営業に出発し、16時ころ、会社に戻ってきました。「ただいま、戻りました!」元気な声が響きわたります。上司の山田課長は高田主任に尋ねます。「今日新規で訪問したA社の様子はどうだった?」「はい。良い反応で早速見積りの依頼を受けましたので、すぐに対応します。」「それは良いね。受注に結び付くようしっかりと提案、フォローをしてください。」

    早速、高田主任は営業事務で入社2年目の佐藤さんに依頼しました。「A社に見積書を提出するから、すぐに作成して!30分以内にできる?遅れたら困るから急ぎで」依頼を受けた佐藤さんは「わかりました。いま本日納期の仕事を抱えていますので、その後に作成しても良いですか?」「何で?すぐに対応してって言ってるのに、受注逃したらどうするの?」ここまで強く言われた佐藤さんは高田主任から依頼を受けた見積書を先に対応しましたが、その後、山田課長に相談にいきました。「高田主任の言っていることは理解できるのですが、態度が人を非常に不快にさせます。課長から言っていただくことは可能でしょうか。」

    山田課長は高田主任からも事情を聴いた上で、次のように述べました。「高田君、いつも営業頑張ってくれてありがとう。ところでチームのメンバーとコミュニケーションはうまくとれてるかな?信頼関係を築く努力は非常に重要なんだ。信頼関係が構築されていなければ、正しいことを言っても人は動いてくれないことがあるんだよ。」

解説 

    コミュニケーションの土台は信頼関係です。信頼関係という土台ができていないにも関わらず正論を主張したところで、決して相手に響きません。むしろ反発を産むだけです。組織としての共通の目標を達成することなどできません。人間は感情の動物です。「何を言うか」よりも「誰が言うか」。部下にとっての上司、後輩にとっての先輩は、「この人の言うことだから信じて付いていこう」と思われるのを目指すことです。では、信頼関係を構築するにはどうすれば良いか。それは次の4点です。

①自己開示

    自身の考え、価値観、短所、コンプレックスも含め相手にさらけ出すこと。上司は部下に弱みを見せたくないばかりに自身の考えと裏腹の発言をしてしまうことがあります。部下は鋭く見抜きます。この人は取り繕った発言をしている、と。不得意、苦手な部分も全てありのままの自分を見せる、これがリーダーのあり方です。

②接触頻度を高める

    業務上最低限の声がけしかしない、ではなく、毎日10回の「ちょっと」ミーティングを行うこと。これは非常に効果的です。「ザイエンスの法則」人間は接触回数によりその人に親しみを覚え、心を開いていきます。

③話をじっくり聞く(傾聴)

    まずは一切の先入観を捨て部下の話を聞き、部下の考えを掘り下げていくことが重要です。そして、顔を見てしっかりとうなずき、体を使って「聴いている」ということを示してあげてください。上司に受容・共感されていると実感できれば、不思議なことに部下からの相談・発信も増えてきます。

④アサーティブな表現(相手も尊重、自分も尊重)

    マネジメントにおいて部下・後輩が間違った行動をとった時、「言わない」という選択を取ることはあってはなりません。管理は性善説でも性悪説でもなく、性弱説。人間は、管理をしてあげなければ怠けてしまいます。しかし、その注意が部下を委縮させ、行動を妨げる結果となるのは好ましくありません。相手も尊重しながら上司として言うべきことを言う。これがアサーティブな表現です。自分を主語にして伝えるI MESSAGE(アイ・メッセージ)の言い回しが簡単に使えます。「〇〇をしろ!」ではなく「〇〇だと助かる」、「〇〇がありがたい」など。「言葉丁寧、内容正論」は素直に相手の腹に落ちていきます。

    山田課長のアドバイスを受けた高田主任は早速、佐藤さんへの接し方を改めました。一方的に主張するのではなく、まずは佐藤さんの話をしっかり聞く。依頼をする時も「佐藤さん、A社の見積書作成を対応してもらえると嬉しいです」と表現を改めました。信頼関係の構築は一日でできるものではありません。しかし、相手と信頼関係を築きたいと心の底から考え、行動を改めていくその姿勢が相手の心の窓を開き、少しずつ信頼関係が構築されていくのです。

【ポイント】    信頼関係が構築されてはじめて、その指導、言動が部下に響く

株式会社経営支援センター 吉田 敬真

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