◆カーディーラーの営業担当Aさん
3年ほど前の話です。自宅の駐車スペースの関係で自家用車の買い替えを検討。色々な車種の情報を集めるため、取り急ぎ国内大手3社のカーディーラーを周りました。最大手のカーディーラーの営業担当は非常に高圧的。「ウチは一切値引きはしませんよ」などと、上から目線であまり良い印象は受けません。2社目は当時乗っていたメーカーの営業担当。悪い印象はないのですが、どちらかというと機械的な対応に終始。最後、3社目の営業担当Aさんは非常に熱心、かつ親身になってサイズや用途など私の希望をきいてくれました。「吉田さんのお話を聞く限り、ウチの〇〇が最適です。絶対後悔しないと思いますよ」1時間半ほどの商談でしたが、即決する必要はない、と考え見積りだけもらい、店を出ました。
驚いたのはその翌朝です。郵便ポストを開けたところ、営業担当Aさんより手紙、それも手書きで丁寧にしたためた文章が入っていたのです。以下、原文そのまま転載します。
「吉田敬真様、お世話になります。本日はお忙しい中、また大変暑い中、当店にご来店いただき誠にありがとうございました。ご検討いただいている〇〇は気に入っていただけましたでしょうか。コンパクトですが、車内は広々ですし、取り回しの良さはご要望にもぴったりと思います。価格面に関しても今月いっぱい何とかしますので、是非とも前向きなご検討をよろしくお願いします。」
前日、店を出たのは18時過ぎでした。そこからわざわざ私の自宅に向かい直接投函しているのです。午前中、Aさんに電話をしてみたところ、21時ころ帰宅途中に投函したとのこと。わざわざ手紙をいただいたことにお礼を述べるとともに、改めて検討する、と伝えました。即決はしなかったものの、購入するならAさんからが良い、と決めていましたので、忙しさが落ち着いた半年後に正式に発注をしました。後日話を聞いたところ、商談当日の手紙投函はよく行っており、お客様からの反応も良いので、若手のときから続けている習慣とのこと。点検のたびに顔を合わせますが、しっかりと話を聞いてくれる素晴らしい営業担当者です。この手紙は良い事例として、ご本人の了解を取った上で私の営業研修でも原本を紹介させていただいております。
◆AI、デジタルの時代だからこそアナログが際立つ
いまはAI、デジタルの時代です。SNSやWEB広告、メール営業など他社がデジタルに流れるからこそアナログが際立ちます。ではなぜ、手書きの手紙営業が効果的なのでしょうか。その理由が次の通りです。
①キーマン、本人に直接届く
会社の代表アドレスに営業メールを送ったとしても迷惑メールとして扱われます。また、電話は最初に取った方や受付で断られたりするケースも多いです。しかしながら、手紙は役員やキーマンの手元に直接届きやすいという特徴があります。
②開封率が高い
一般的に、メールの開封率は20%前後と言われます。しかしながら、郵送物(手紙)の開封率は80%を超えるとも言われます。宛名を手書きにすると更にその開封率は上がります。中身を見てもらえる確率が他の媒体よりも格段に高いのです。
③記憶、記録に残りやすい
物理的な媒体であり、手書きである以上すぐに捨てることができず(申し訳ないという気持ちにさせ)、机の引き出しに保管されたり、後で見返される可能性も高いです。数か月後にふと、「そういえばあの担当者に連絡してみよう」と思い出してもらえることもあります。まさに私の今回の事例です。
④信頼感と誠実さが伝わる
宛名を手書きで書いてもらえると、「自分のために時間を割いてくれた」という特別感が働きます。この特別感に報いてあげなければという感情をお客様は抱くもの。これが、「良いことをされたらお返しをしなければならないという気持ちになる」、返報性の法則です。
◆効果的な手紙営業のやり方
それでは、成果につながる手紙営業のやり方はどのようなものでしょうか。
①タイミングを逃さない
お客様の記憶に残すためにもタイミングは重要です。理想は商談当日に投函。少なくとも翌日には投函をしておくこと。商談との間隔が開けば開くほど、その手紙の効果は薄れていきます。
②手書きを入れる
先のAさんのように全文手書きが好ましいですが、少なくとも宛名や追伸などは手書きにすることが重要です。これにより、大量送信ではない「あなただけ」という印象を持たせることができます。綺麗なフォーマットにこだわる必要もありません。むしろ泥臭い手書きの方がよほど目にとまります。
③定型文に加えお客様ならではのエピソードを加える
文章の基本的な型はつくっておいた方がよいですが、商談中に出たエピソードも文章の中で触れておいてください。
④次回の行動を明記する
「来週金曜日に改めてご連絡します」や今回のAさんの手紙のように「見積り金額は今月いっぱい頑張りますのでご検討ください」など、お客様が次に何をすれば良いかを明記しておくことで、見込みからの離脱を防ぐことができます。
【ポイント】
アナログ営業を避けていないか?他社や競合が避ける、いまだからこそ手紙営業は効果を発揮する!
株式会社経営支援センター チーフコンサルタント 吉田 敬真