~「なぜ、この給与なのか」を説明できる仕組みに~
■給与は「生活のため」だけではない
給与は、社員とその家族の生活を支える大切なものです。そのため、これまでの日本企業では、年齢や勤続年数、家族構成などを考慮した「生活給」という考え方が広く取り入れられてきました。年齢や勤続年数とともに給与が上がっていく仕組みには、社員が安心して長く働けるという良さがあります。
一方で、働き方や価値観が多様化し、中採用や若手社員が増える中、「年齢が上だから給与も高い」「長く勤めているから給与が上がる」という考え方だけでは、社員の納得を得にくくなっています。これからの報酬(賃金)制度で大切になるのは、生活の安定にも配慮しながら、「なぜ自分の給与はこの金額なのか」を社員が理解できることです。
■着眼点①「何に対して払うのか」を明確にする
報酬制度を考えるうえで、まず明確にしたいのが「会社は何に対して給与を払うのか」ということです。年齢や勤続年数なのか、担っている役割なのか、仕事の難易度なのか、能力や技能なのか、あるいは成果や会社への貢献なのか。これらが曖昧なままでは、社員から見て給与の違いが分かりません。大切なのは、会社として報酬に反映する要素を整理し、その考え方を社員に伝えることです。報酬制度は単なる給与計算のルールではなく、「会社が何を大切にしているか」を社員に伝える仕組みでもあります。
■着眼点②「頑張り」と報酬をつなげる
社員の不満として多いのが、「頑張っても給与が変わらない」「成果を出している人とそうでない人の差がない」というものです。もちろん、すべてを成果だけで決めればよいわけではありません。 しかし、役割が大きくなった、仕事の幅が広がった、技能が向上した、成果を上げたといった成長や貢献が、何らかの形で処遇に反映されることは重要です。「成長すれば次の等級へ」「役割が上がれば基本給や手当へ」「成果や貢献は賞与へ」など、成長・役割・成果と報酬のつながりを見える化することで、社員にとって将来の目標も分かりやすくなります。
■着眼点③「公平」と「一律」は違う
報酬制度では「公平性」が重要ですが、公平とは全員を同じように処遇することではありません。担っている役割や責任、仕事の難易度、成果や貢献が違えば、報酬に違いが生じるのは当然です。重要なのは、その違いについて社員が「なるほど」と理解できることです。「同じだから公平」ではなく、「違いに理由があるから公平」という考え方が、これからの報酬制度では大切になります。
■着眼点④「金額」だけでなく「決め方」を伝える
給与に対する納得感は金額の高さだけで決まるものではありません。「なぜこの基本給なのか」「なぜ今回の昇給額なのか」「なぜこの賞与額なのか」が説明されないと、不満や不信感につながります。等級、評価、基本給、手当、賞与がどのようにつながっているのかを分かりやすくし、社員へ説明することが重要です。制度をつくって終わりではなく、会社の考え方を伝え上司が社員に説明できる状態にする。報酬の「見える化」と「説明」が納得感を高めます。
■着眼点⑤「将来が見える」報酬制度にする
社員にとって重要なのは現在の給与だけではありません。「この会社で成長すると、将来どのような役割を担い、どのくらいの処遇を目指せるのか」が見えることも大切です。等級や役職、キャリアと賃金水準の関係を示すことで、社員は自分の将来を描きやすくなります。報酬制度は過去の働きに対する対価だけではなく、「これからどのように成長してほしいか」を示す会社からのメッセージでもあるのです。
■まとめ
これからの報酬制度は、「生活給をなくして成果給にする」という単純な話ではありません。生活の安定を大切にしながら、役割・能力・成長・成果などを適切に組み合わせ、社員が「なぜこの給与なのか」を理解できる仕組みにしていくことが重要です。「いくらもらえるか」から、「なぜこの金額なのか」へ。そして、「何を頑張れば次の処遇につながるのか」が分かれば、報酬は単なる生活のためのお金ではなく、社員の成長や挑戦を後押しするものになります。給与の高い・低いだけで満足度を考えるのではなく、会社の考え方が伝わり、社員が納得できる報酬制度をつくること。それが、人材の定着と成長、そして会社の持続的な成長につながっていくのです。
株式会社経営支援センター 人事コンサルタントチーム