「管理職だけ」がキャリアではなくなる

「管理職だけ」がキャリアではなくなる

2026/08/01

「管理職だけ」がキャリアではなくなる

 ~多様な人材が活躍できる人事制度へ~

 前回は、「年功」から「役割・成果」への転換についてお伝えしました。その中で、会社が社員一人ひとりに期待する役割を明確にすることが、人材育成や組織力向上につながることをご紹介しました。

 今回は、その延長線上にある「キャリアの考え方」について考えてみたいと思います。 これまで多くの企業では、「昇進=管理職」という考え方が一般的でした。主任、係長、課長、部長へと昇格し、部下を持つことがキャリアアップの象徴とされてきました。しかし、最近ではこの考え方が大きく変わり始めています。

 背景には、人材不足や働き方の多様化、専門性の高度化などがあります。特に若い世代では、「人を管理する仕事よりも、自分の専門性を高めたい」「現場でお客様に価値を提供し続けたい」と考える人が増えています。つまり、すべての社員が管理職を目指す時代ではなくなってきたのです。

管理職が向いている人と専門職が向いている人は違う

 優秀な営業担当者だからといって、優秀な管理職になれるとは限りません。技術力の高い社員も、設計や開発に強い社員も、必ずしも部下のマネジメントが得意とは限りません。それにもかかわらず、「昇進するには管理職になるしかない」という制度では、本来力を発揮できる人材が管理業務に追われ、専門性を十分に活かせなくなることがあります。会社にとっても、本人にとっても、大きな損失と言えるでしょう。だからこそ、「管理する人」と「専門性で貢献する人」の両方を評価できる仕組みが求められています。

専門性も会社の大切な財産

 中堅・中小企業でも、高い専門性を持つ社員は数多くいます。例えば、①お客様から絶大な信頼を得ている営業担当者②現場経験が豊富で、品質を支えている技術者③DXやITを推進できる社員④若手社員の相談役となっているベテラン社員こうした人材は、管理職ではなくても会社の競争力を支える存在です。今後は、「役職が高い人が評価される」のではなく、「会社へどのような価値を提供しているか」という視点がより重要になります。

キャリアの選択肢を増やす

 人材不足が続く中で、社員一人ひとりが長く活躍できる環境づくりは重要な経営課題です。そのためには「管理職になる」「専門職として活躍する」など、多様なキャリアの選択肢を用意することが求められます。もちろん、中小企業が大企業のように複数のコースを細かく設計する必要はありません。 
まずは、①マネジメントで組織を支える人②専門知識や技術で会社へ貢献する人という二つの役割を意識するだけでも十分です。社員自身が自分の強みを活かせる将来像を描きやすくなり、働く意欲や定着率の向上にもつながります。

処遇も「役割」に合わせて考える

 専門職制度を導入すると、「管理職でなければ給与は上がらない」という考え方も変わります。専門性を高め、会社へ大きく貢献している社員であれば、その役割に見合った処遇を行うことが重要です。逆に、管理職だからという理由だけで高い処遇を続けるのではなく、マネジメントとして期待される役割を果たしているかを評価することも必要になります。つまり、評価する対象は役職ではなく「果たしている役割」なのです。

中小企業だからこそ実現しやすい

 「専門職制度」と聞くと大企業だけの仕組みと思われるかもしれません。しかし、実は中堅・中小企業の方が導入しやすい面もあります。社員数が少ないからこそ、一人ひとりの強みや適性を把握しやすく柔軟な役割設計ができます。 また、経営者と社員の距離が近いため、「この人にはこんな役割を期待したい」というメッセージも伝えやすい環境があります。制度を複雑にする必要はありません。「管理職だけがキャリアではない」という考え方を共有することが、多様な人材が活躍できる組織づくりの第一歩になります。

最後に

 これからの人事制度は、「全員が同じキャリアを歩む」ことを前提とする時代ではありません。社員それぞれが持つ強みや能力を活かし、多様な役割で会社へ貢献できる仕組みをつくることが重要です。管理職として組織を牽引する人もいれば、専門性を磨いて会社の競争力を高める人も、どちらも会社に欠かせない存在です。人事制度は、社員を一つの型にはめるためのものではなく、一人ひとりの強みを活かし、成長を支える仕組みです。

株式会社経営支援センター 人事コンサルタントチーム 

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