モチベーションの源泉

モチベーションの源泉

2022/01/10

モチベーションの源泉

    「モチベーション」という言葉はビジネスの世界で非常に多くの場面で使われています。上司が部下に対して「モチベーションを上げなさい」と叱咤激励する場面。「モチベーションが上がらなかったので取り掛かれません」と上司や自分自身への言い訳で使う場面。しかし、他者から「モチベーションを上げろ」と言われて上がるものなのでしょうか。更には、モチベーションを上げるために給与を上げる、などの施策が本当に有効なのでしょうか。今回はモチベーションのメカニズムを考え、社員(部下)のモチベーションを上げる手法を解説します。

大型プロジェクトの事例

    ある食品卸売業の営業1課では年度末に向け、メーカーとタイアップした大型販促プロジェクトを立ち上げました。山田課長は中堅社員の鈴木係長をリーダーとして、2年目社員の佐藤さん、新人の田中君の3名にプロジェクトの遂行を任せました。立上げ当初は色々とミーティングを行い意欲的に進んでいるように見えましたが、次第にメンバーの意欲は下がっているように思えます。プロジェクトがスタートし2週間経ったある日、山田課長は鈴木係長に進ちょくを確認しました。

    鈴木係長「今回のプロジェクト、上手くいかないかもしれません。メーカーはこちらの要望を全く聞いてくれませんし、社内の調整も難航しています。問題が発生するたびにどんどんメンバーのモチベーションが下がってきています。このプロジェクトが成功したからといって昇給するわけでもありませんし。」山田課長は言います。「モチベーション、ですか。佐藤さんと田中君にはどのように声がけをしているのですか?」鈴木係長「落ち込むな。ヤル気を出せ!と発破をかけています。」山田課長「モチベーションは上げろと言われて上がることはありません。最終的なモチベーションは本人の心次第。重要なのは、どう本人の心に働きかけるかです。」

解説 

    2017年の日本経済新聞の記事です。アメリカのコンサルティング会社による世界各国の企業に対する調査によると、日本の「熱意あふれる」社員の割合は6%で、調査した139ヶ国中132位。残念ながら日本は世界でも仕事に対するモチベーションが最も低い国のうちの一つとなっています。種々の理由があると思われますが、当記事では上司のあり方が主たる原因と示唆されていました。

    では、上司として部下のモチベーション向上をどのように図れば良いか、有効なアプローチを紹介します。

1.モチベーションは後からついてくる

    部下のヤル気が湧かない場合、まずは無理をしてでも行動に取り掛からせてください。すると、作業を行う手足や目が脳に楽しさの信号を送ります。その後、脳は楽しさを認識し、行動を継続できるようになります。「モチベーションがないから行動できない」ではなく、「行動していないからモチベーションが湧かない」なのです。

2.「満足」をつくる要因と「不満」をつくる要因

    アメリカの臨床心理学者ハーズバーグ氏によって提唱された非常に有名な理論である二要因理論。仕事への「満足」をつくる要因(動機づけ要因)と「不満」をつくる要因(衛生要因)は全く別次元であり、「不満」を解消したところで「満足」を生むわけではありません。多くの会社・上司は、部下のモチベーション向上のために待遇・賃金・人間関係などに対する「不満」潰しを優先します。しかしながらそのような施策は一見効果があるように見えますが、瞬間的なものにすぎません。成長・達成感・評価・感謝などの要因による「満足」を提供してあげなければ、モチベーション向上につながることはあり得ないのです。

3.安易に褒めるな、叱るな

    「部下を褒めて伸ばしなさい」は部下指導でよく聞くアプローチですが、注意が必要です。なぜなら、「褒められる」うちに、「褒められる」ことそのものを報酬と感じるようになり、達成感や成長がゴールとならなくなるからです。部下が何か良いことをしたときは「よくやった、素晴らしい」ではなく「有難う」とシンプルに感謝を伝えましょう。また逆に「叱る」のも、「叱られる」ことそのものを逃げるようになります。叱らずに改善点を伝える、これが重要です。

4.自己決定理論

    前述の3点につながることですが、多くのモチベーション論を統合して生まれた自己決定理論では、①自ら決めた行動、②自己有能感、③他者を尊重する環境、の3つの条件こそがモチベーションの源泉と説きます。「報酬が得られる」、「叱られるのが怖い」、などの外的要因ではなく、「仕事そのものが楽しい」という内的要因で仕事に向かう部下にいかに育てていくか、が上司には問われます。

    確かに今回のプロジェクトは問題が山積し、不安がどんどんメンバーに渦巻いていきました。不安が行動を鈍らせ、更に不安は増していく負の連鎖にありました。改めて鈴木係長は佐藤さんと田中君に次のように声がけをしました。「モチベーションはね、行動をすることによって後からついてくるんだよ。不安なときこそまずは行動!」メンバーはまずは行動に取り掛かりました。一つひとつ問題に取り掛かるにつれて、次第にこのプロジェクトを何としても成功させたい、という気持ちが強まっていきました。その様子を眺めていた山田課長はこのプロジェクトの成功を確信しました。

【ポイント】モチベーションは人から与えられるものではなく、まず行動にとりかかることで、自分で作り出すものである。

株式会社経営支援センター 吉田 敬真

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