交渉とは妥協である

交渉とは妥協である

2023/05/23

交渉とは妥協である

テーマ⑳「交渉とは妥協である」

    良い条件を引き出そうとこちらの主張をするばかりで、結果として決裂してしまい人間関係すら崩壊してしまう。何も考えず相手主導で望む結果が得られない。交渉の場面で良く見られる失敗例です。「上司の決裁をもらう、営業経費の予算を獲得する、部下に仕事の意味を理解させる、お客様に商品を購入していただく。」社内外を問わず、仕事をしていく上で交渉は避けられません。今回は上手くいく交渉術について解説をしていきます。

「販促経費の予算組み交渉の事例

    ある食品卸売業A社の事例です。来期の予算組みの取りまとめを行っている経理課の中野課長。高山経理部長の指示により営業1課と交渉をする必要があります。高山部長からは「営業1課は毎年、売上を拡大させている優秀な部署です。彼らの要求を抑えるのは大変でしょう。実は先日、営業担当役員からも経費の増額依頼があったところです。慎重に交渉をしてください。」中野課長は既にある程度、予算組みは終わっていましたので、いまさら増額を要望されても非常に困惑しています。

    営業1課長より内線電話がありました。「来年の販促経費の増額検討をお願いします。」「お気持ちはわかるのですが、他部署との兼ね合いもあり、すぐに了承できるわけではありません。」営業1課長は言います。「うちが、会社の業績をけん引しているのだから、それは困りますよ。」「そうは言っても・・・」議論は平行線をたどり、1回目の交渉では結論に至りません。中野課長は高山部長にその経緯を報告したところ、部長は交渉の原理原則について説明を始めました。

解説 

    交渉に苦手意識を持つ方は多いのではないでしょうか。しかしながら交渉が嫌だからと言って避けていれば、望む結果も得られず、周囲の評価は高まりません。実は、世の中のほとんどの事がらに交渉の余地は存在します。むしろ、交渉をしなければ知らず知らずのうちに不利益を被っている可能性もあります。

1.交渉は勝ち負けではない

    交渉の定義は、「利害関係のある二者、もしくは複数が、互いの要求を主張して、最終的な妥結点に到達するプロセスのこと」です。どちらか一方が勝ち、一方が負けるわけではなく、双方のメリット・利益を最大化することが目的であり、いわば妥協を目指すことです。

2.交渉の事前準備

    交渉に臨むにあたり、押さえるべき点は次の3点です。

①情報収集 

    社内であれば観察する、立場・人間関係・性格などを把握などする。社外であれば事前にHPやSNS、その他情報源より出来る限りの情報を収集しておく。

②タイミングをはかる

    いまの機嫌はどうか?何か良いことや良くないことが発生していないか。また繁忙期や業務集中期ではないか。交渉を行うにも相手の状況により成功の可能性が変わってくる。

③目標設定

    交渉が終わったとき、相手に何をしてもらいたいかを設定。感情に流されず、交渉中も常に忘れない。また、BATNA(バトナ/これ以下では受けないライン)を設定するのも効果的。BATNAとは例えば、中古車を下取りに出すとき、事前にネット等で他店の下取り最低金額を知っておけば、「あなたと契約しなくても別の良い選択肢が自分にはある」と強気に交渉をすることができる。

3.交渉の基本的な姿勢

    まずは第一印象。ある調査によると、交渉が成功に至った理由の55%は人柄。「この人は信頼できる」と相手に思わせる誠実な態度、言動、表情が重要となる。

4.交渉のテクニック

    すぐにでも活用できる代表的なテクニックを紹介します。

①アンカリング(先に出された情報との比較)

    人は比較により決断を下す。不動産賃貸の案内をする場合はお客様の要望を聞いた上で、金額は合うが非常に状態の悪い物件、次に非常に状態は良いが予算が合わない物件、最後にお客様の要望に沿う物件を紹介し、決断を促す。

②譲歩

    コツは2つ。1つ目が譲歩する理由を明確にすること。根拠のない値下げは逆にお客様の信頼を失う。値下げをするにも詳細を明らかにする。もう一つが、最初の譲歩幅を一番大きくし、徐々に幅を小さくすること。もうこれ以上の譲歩は無いと認識させる。

③社会的証明

    他人(特に専門家)が良いというものを自分も良いと思ってしまう。名刺の肩書は「営業」ではなく、「〇〇アドバイザー」とする方が良い印象を与える。

④書面に落とし込む

    交渉の過程では大きな事柄は決まっているが、大抵の場合、詳細までは気が付いてない場合がある。その場合は交渉終了後、今回の交渉の経緯、次回検討項目をメールなどで相手に送る方が次回の交渉で主導権を握ることができる。

高山部長の説明を聞いた中野課長は営業1課長との再交渉に臨みました。お互いの主張だけではなく、会社としてのメリットは何なのかをゴールに設定し、双方の合意を取り付けることに成功しました。

【ポイント】
交渉は勝ち負けではない。相手のメリットに注目せよ。

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