部下より退職の申し出を受けた際の対処方法

部下より退職の申し出を受けた際の対処方法

2023/11/01

部下より退職の申し出を受けた際の対処方法

テーマ㉖「部下より退職の申し出を受けた際の対処方法」

    『期待し熱心に指導していた部下より突然の退職の相談。動転し、とっさに「それは仕方ない。新天地でも応援するよ」と回答。程なく退職に至りましたが、一年経ったいまでも本当にその対応でよかったか、悩んでいます。』係長研修を実施した際、このようなケースの正しい対処方法について質問がありました。部下から退職の申し出を受けたときには原則が存在します。今回は、そのような場合での上司が取るべき一連の流れについて解説していきます。

「いまの仕事を続ける自信がなくなってしまいました・・・」

    食品卸売業A社営業部での一コマです。営業一課の高田主任に対し、入社2年目になったばかりの上原さんから相談がありました。「高田主任、相談したいことがあるので、本日お時間よろしいですか?」高田主任「わかったよ。では、今日の18時からでもよい?」相談は下記の通りでした。「主任、大変申し訳ございませんが、退職を考えています。色々と考えましたが、いまの仕事を続ける自信がなくなってしまいました・・・」非常に可愛がっていた後輩であり、突然の申し出に驚いてしまい、「えっ?そうなの?次決まってるの?」と気の利いた回答ができません。転職先は決まってないとのことでしたが、「来週の火曜日にもう一度時間もらえる?自分としても色々とできることを考えるから」と半ば逃げるように、相談を打ち切り後日もう一度、場を設定しました。上司の山田課長にアドバイスをもらうのが必要だと考え状況を報告したところ、山田課長「そのような場合、まずは退職の決断に至った原因、いまの状況をしっかりと聞いてあげてください。慰留する必要もありませんし、退職をすんなりと認めてあげるのも得策ではありません。まずは傾聴により想いを全て聞いてあげるのが優先です。」

解説

    部下から退職の相談を受け、動じない上司は少数派でしょう。また、日頃から目をかけていた部下であればあるほど、対応方法に苦慮します。また、昨今の採用難、人手不足の影響もあり、「なるべく離職者を減らす」ことを目標に置いている企業も多くあります。しかしながら、どのような理由であっても慰留を図るのが得策なのでしょうか。退職の申し出を受けたときにまず、上司がとるべき対処方法は次の通りです。

1.まずは想いを吐き出させ、後日再面談をすることを約束

    「もう少し頑張って続けよう!」と慰留したり「それは仕方ない」と退職を認めたりはせず、まずは退職の意志に至った原因、現状をしっかりと傾聴し、話させてください。そして、「何ができるかを検討するので、来週の金曜日、また30分ほど時間はとれるか?」などと、再度話し合いの場を設定します。

2.退職を認めるか、引き留めるかを検討する

    傾聴し部下より得た情報を基に下記の点から退職を認めるか、引き留めるかの判断を下します。

①チームにとってプラスかマイナスか

②部下自身にとってプラスかマイナスか

③他の部署に異動して成長の余地があるか

④いまのチームに残して成長できる方法があるか

    はじめから結論ありきではなく、様々な角度から可能性を検討することが重要です。

3.自身の結論を持って上司(人事)と相談

    決意を固めて上司(人事)と相談します。慰留をするのであれば、説得の方法、条件を考え上司の意見をもらう。退職を認めるのであれば自社に良いイメージを持って辞めてもらうためのストーリーをつくる必要があります。

4.本人との対話

    退職を認める場合も対話の場は準備してください。慰留を行う際の説得方法として次の事例が参考になります。

    私たちは生活費を稼がなければなりませんので、人生には3つの選択肢しかありません。①いまの会社で頑張る、②転職、③起業。会社は矛盾の宝庫ですので、②のケースも隣の芝生は青く見えるだけで、結局新しい会社でも苦労する可能性は高いです。また、いまの会社で実績を上げていない人間が③起業し看板の無い状態からお客様をゼロから開拓することは、多大な人間力を必要とします。

    結論から言うと、退職を目的とするよりも、いまの会社でどこに行っても通用するスキルを身につける方がキャリアの可能性は広がっていきます。会社が嫌で辞めるのではなく、社内外から認められ実力をつけた後に卒業する方が結果的には幸せにつながります。

5.日頃の部下との接し方、職場風土を再度見直す

   そもそもの話しではありますが、日頃、退職の申し出に至った部下にどのように接していたでしょうか。本当に信頼関係は構築されていたでしょうか。職場風土を再度把握する機会にしてください。

6.退職が必ずしも悪いわけではない

    昨今の風潮として、「まず慰留をせよ」、との方針がある会社も多いですが、私は必ずしもそれが正しいとは思えません。モチベーション低く、周りに悪影響を与えるのであれば、申し出を認めてあげるのも当人のため、組織のためになることもあります。また、一度は慰留に成功したものの、再度退職を申し出てきた場合はもうロイヤリティはありませんので、退職を認めた方が賢明です。

 高田主任は上原さんと再度面談を行いました。そしてしっかりと原因を話してもらい、対処方法を検討しました。結果的にいまの会社で異動とはなりましたが、成長のため、自分自身のキャリアの可能性を広げるため、もう一度頑張ろう、と上原さんは決意しました。

【ポイント】
退職の申し出の対処方法には原則が存在する。組織・個人双方にプラスとなるべく、今後の可能性を検討せよ。

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